就活Tips
企業研究の方法
writer: 伊藤
投稿日: 2024.04.12
株式会社サムテックの伊藤です。会社では主にシステムの開発を行っていますが、採用のお仕事にも携わらせてもらっています。企業研究にはインターネット上での調査、会社訪問、インターンシップ参加、OB訪問などたくさんの方法があります。今回は、新卒の学生さん向けにインターネット上でできる企業研究の方法を解説していきます。
業界研究
まずは業界研究を行う対象を絞っていきます。業界を横断的に調査するには、四季報が出している「業界地図」が、一目見てわかる相関図などがあって便利です。業界を絞る際に注意することとして、業界は多層であるということを意識することです。例えば、ソフトウェア業界はIT業界の中に含まれますし、アプリケーション業界はソフトウェア業界に含まれます。業界研究では使える時間や自分の興味の範囲に応じてどのレベルまで研究するかを考えることも大切です。
業界を絞ったら、その業界の市場規模や成長性、事業形態など業界の概要を調査していきます。例えば、ソフトウェアの開発であれば、国内の市場規模が6兆円ほど、年間成長率が6.7%ほどで、サービスの提供形態には自社開発、受託開発、技術派遣(SES)があります。何十兆とある金融や自動車産業と比べると小さいですが、全体的には大規模な産業です。他の産業に比べて高成長を続けているので、最初は給料が高くなかったとしても、将来の上昇は期待しやすそうです。サービスの提供形態で勤務内容が大きく変わるので、自社開発、受託開発、技術派遣についてもしっかり調べる必要があります。同じIT業界の隣接業界にはAI業界など全産業で最も成長している業界もあり、ソフトウェア開発で経験を積んだ後、AI業界に転身するといったキャリアパスも考えられそうです。
また、どんな職種があるのか調べて、働き方をイメージできるようにすることも大切です。例えば、IT業界と言っても、プログラマーやエンジニアなど実際に開発を行う仕事だけではなく、ITを利用して課題解決を行うコンサルや、エンジニアの派遣先を探す営業職などもあります。また、エンジニアはエンジニアでも開発ではなく運用・保守専門の職種があったり、開発対象がソフトウェアかネットワークかで職種が異なったりします。(ブログ記事「エンジニアの種類と関係性」にて解説)一口にIT業界で働きたいと言ってもどんな働き方をしたいのか考える必要があります。
以上を考慮してソフトウェア業界についてまとめたサンプルは以下の通りです。結果は業界の切取り方によって大きく変わるので、サンプルと異なっていたとしても気にする必要はありません。ただし、サンプルの粒度は粗いので、実際はもっと細かく調査するようにしてください。
内容をまとめると、ソフトウェア業界は他業界に比べて給与も高いですが、残業も多いです。売り手市場なので、より高い年収を求めて転職する人が多く、結果として平均勤続年数は短くなります。男女比は男性に大きく偏っています。また、平均売上高9.9億円、平均従業員数44人となっていますが、中央値で算出すると従業員数は20人ほど(売上高の中央値は不明)と平均値と中央値の乖離が大きいです。以上からわかることとしては、そもそも就職がしやすい業界ですが、特に女性、同じ職場で長く働き続けたい方、従業員規模を問わず働きたい方は明確なストロングポイントになるでしょう。
企業研究
業界研究が終わったら、企業研究に進みます。実際にエントリーするかどうかは置いておいて、まずは業界最大手の企業HPを見ることをオススメします。その理由は、最大手だけあって事業は幅広く展開され、情報公開も進んでいます。採用サイトも充実しています。また、財務ハイライトや中期経営計画から業界全体の成長率を予測することができ、最初の企業研究の対象としてうってつけです。2024年4月現在、日本で最大のIT企業はNTTデータになります。
NTTデータでは新卒向けに専門のサイトが用意されています。ここで募集要項や選考フローの流れを確認できるだけでなく、事業や募集職種の説明ページも用意されています。社員インタビューやオフィス内の映像も用意されているので会社の雰囲気もざっくりとはつかめるかと思います。企業研究の最初としてはまずここをしっかり調査することから始めます。
続いて、IR情報を見ていきます。IR情報とは上場企業が投資家向けに公開している情報になります。就活と関係あるのかと思うかもしれませんが、売上高や営業利益などの財務状態や経営方針など就活生にとっても極めて重要な情報が公開されています。
IR情報を見てみると、NTTデータでは中期経営計画の目標売上を4兆円(2023年末で3.17兆円)としていて、そのための戦略の1つとしてグループ内連携を強化していっていることがわかります。なので、面接でどういった仕事をしてみたいか聞かれた時などに「御社が力を入れているグループ連携に関わる仕事をしたい」とか話すとよく調べているなと思われるかもしれませんね。
余裕がある方はIRライブラリにある有価証券報告書にも目を通してみましょう。有価証券報告書とは上場企業が法律によって作成が義務付けられている報告書のことで、おそらくすべての公開情報の中で最も詳細で、信頼性の高い情報源になります。細かい見方は割愛しますが、計画に対する進捗などを確認できるほか、事業におけるリスクや財務上の脆弱性など、直接サイトには載せにくいネガティブ情報もここで確認することができます。
紹介した内容以外にも企業のHPには提供しているサービス紹介など見るべき場所が山ほどあります。すべてを確認していると、とてもじゃないですが時間が足りなくなりますので、調査項目の順番を決めて、志望企業ごとにどこまで調査するのが良いのか考えながら進めるのが良いでしょう。
中小企業の調べ方
一方、弊社のような中小企業の場合、そもそも情報公開量が少ないことが殆どです。企業規模の割には弊社も公開量を増やす努力はしていますが(弊社ホームページ)、先に紹介したNTTデータと比べると天と地の差がありますね。そもそも中小企業はどうやって見つければ良いのかわからないという方も多いんじゃないでしょうか。ここでは、いくつか中小企業を見つける方法について紹介します。
一番簡単な方法はブラウザを開いて「IT 企業 大阪」などのワードで検索することです。検索キーワードに関連する企業を探すことができます。従業員数や売上高などで絞って検索したい場合はBaseconnectが利用可能です。検索して企業を見つけるだけなら、会員登録は不要です。上場可否や売上高、従業員数で絞り込めるので、中小企業も見つけることができます。
求人ベースで探すのであれば、Indeedや求人ボックスで検索すると良いでしょう。これらのサービスは検索エンジンがインターネット上の求人をクロールして、企業HPや他の就職サイトから求人を引っ張ってくる仕組みになっています。お給料や福利厚生での絞込みができるので、ワークライフバランスを大事にしたい方にとっては便利かもしれません。中途の求人が多いですが、新卒サイトからも求人をクロールしていますし、技術職でも「未経験OK」な企業は経験上、新卒も募集していることが多いと思われますので、求人の企業名を確認して、ホームページを直接検索してみてください。
中小企業の場合、対面のイベントに参加するには、費用が数十万~数百万になることも多く、予算の捻出が難しい現実があります。インターネット上ではそういった制約もないので、先に紹介した方法で企業を見つけ出し、直接コンタクトを取ってみてはいかがでしょうか。小さい会社には小さい会社なりのメリットがあり、学生から会社訪問したい旨の連絡があれば、求人が出ていなかったとしても受け入れてくれる所が多かったりします。(弊社は大歓迎です!)中には育成制度がないからという所もありますが、中途のみの採用しかしていない企業も、本音では新卒を採用したいと思っている企業が多かったりします。ただ新卒の方は大手企業に流れがちで自分たちには目もくれないことをよく知っているので、費用対効果の観点から泣く泣く諦めてる場合は往々にしてあります。
研究結果
最後に弊社を対象とした企業研究のサンプルを紹介します。システムエンジニアを目指す方にとっては弊社のエンジニアファーストの文化は魅力に感じやすいかもしれません。会社によっては営業組織の力が強く、エンジニアが疲弊している現場などもありますが、弊社では圧倒的にエンジニアの声が強いです。(というより、社内にエンジニアしかいません!) また、大手企業は数年かけてシステム投資計画を立てるため、弊社のように大手との取引が多い企業は不況にも強いです。リーマンショックの時もリストラが行われるようなことはありませんでした。一方、大手に依存している割合が高いので、取引を打ち切られた場合、大きな打撃を受けてしまうことでしょう。社員数が少なく一人一人の影響力が大きい反面、社員がやめてしまった時の打撃ももちろん大きいです。 以上のように会社の特徴を分析して、自分の強みなども絡めながら志望動機を作るようにしてください。
参考サイト