業界研究
エンジニア・プログラマーって将来どうなるの?
writer: 新城
投稿日: 2024.04.11
なりたい職業ランキングで、近年上位に入り続けている「エンジニア」と「プログラマー」。小学生のプログラミング学習の必須化などから将来性が注目されているのがわかります。
ですが、10年前のランキングでは両者ともランキング外です。ここ数年で一気に認知度が上がり、人気が出てきた職業だと思います。一種のバブルのようなもので、一時期TOPに君臨したYouTuberのように将来的に廃れてしまう職業なのでは?と思うかもしれません。
この記事では、エンジニア・プログラマーって将来どうなるの?という疑問について解説していきます。
職業の将来性・安定性とは?
職業の将来性・安定性や、仕事に求めることは人それぞれですよね。あいまいのまま進めるとわかりにくいので、今回は「職業の将来性・安定性」を、
- 需要があり、社会になくてはならないもの。または今後そうなる可能性が高いもの。
- 業界の発展が見込めるもの。またはその可能性が高いもの。
- 社会の変化に強く、働き方が選べるもの。
- AIや機械に代替できないもの。
の4つの観点から総合的に判断できる。としたいと思います。
エンジニア・プログラマーとは?
エンジニア、プログラマーとは、「開発を経験して感じたエンジニアとプログラマーの違い」でも解説した通り、
- エンジニア プログラミング作業を含むシステム開発業務を行う人のこと
- プログラマー プログラミングを使う作業に取り組んでいる人のこと。
です。開発の現場では、明確に分かれているわけではなくプロジェクトやその人の経験により業務範囲は異なります。
エンジニアとプログラマーの需要
エンジニアが作成するものは主に、アプリやシステムになります。家電製品や車で使用されるプログラムを開発する組み込みエンジニアというエンジニアも存在します。 アプリやシステムは主にスマートフォンやパソコンと言った端末で利用されます。総務省が発表している情報通信白書では、スマートフォンの保有率は80%を超えており、2021年では90%に近い値になっています。パソコンについても7割近い人が保有しています。スマートフォン、パソコンは人々の生活にとって必需品となっており、特にスマートフォンは無くてはならないものになっています。
当然、それらで使用されるアプリ、システムを作成するエンジニア、プログラマーの仕事もなくなることはないでしょう。
IT業界の成長
日本は人口減少が深刻な社会問題としてあります。それに対応するため、社会全体でDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を進めていこうという流れがあります。DX化とは、デジタルの技術を使用して、社会、生活をより良い方向に変化させることです。例えば、家の鍵とインターネットを接続し、自身のスマホから鍵を開けられるようにするといったIoTや、単純作業の代替、車の自動運転にも使用されるAI。資料やデータを紙媒体からインターネット上で扱えるようになるクラウド化など、今まで人間の手作業で行われていた作業をコンピュータに代替させることができるようになってきています。人口減少が急速に進む中、少しでも経済活動を維持するために、官民連携でDX化は非常に強力に推し進められてます。
クラウドを例に出すと、市場規模は2018年の1884億ドルから2021年には4106億ドルと2倍以上に成長しました。さらに2026年には9152億ドルになる見込みです(参照:情報通信白書)。クラウド化を進めることにより、今まで自社で行っていたハードウェア管理やOS、ミドルウェアなどの管理をクラウド事業者に転嫁し、コア事業に専念できるようになります。また、クラウド基盤は従量課金型で利用することができ、最小コストでサービスを始められるので、多くのスタートアップに利用されています。このようにクラウド化に限らず、DX化は様々なメリットがあるので今後も拡大していくでしょう。同時に、そのDX化の実作業を行うことになるエンジニア、プログラマーの需要も増え続けることでしょう。
エンジニアとプログラマーの働き方
近年、コロナの影響で、様々な働き方ができることが注目されています。その場所に出社しないと、業務が行えない職業や、病気のまん延、自然災害などの影響を受ける職業より、テレワーク、リモートワークと呼ばれる働き方の選択肢が、いつでも取れる職業の方が社会変化に強いとされています。エンジニアとプログラマーはその最たる例で、国土交通省の令和3年度テレワーク人口実態調査では、「情報通信業」のテレワーカーの割合は74%になっています。
このように、エンジニアとプログラマーは場所を選ばず働けるため、社会変化に強い職業といえます。
エンジニア、プログラマーの社会変化に強い理由については活躍の場が日本国内に留まらないのも要因のひとつになっています。プログラミング言語は世界共通なので、コミュニケーション言語、文化の壁を乗り越えられればグローバルに働けます。
また、日本とアメリカで、エンジニアの年収は約2.8倍の差があり、アメリカの方が高いです。アメリカだけでなく、ヨーロッパの地域とも差があるため、難易度は高いですが海外挑戦することはリターンも大きいです。(参照:ヒューマンリソシア調査[独自レポート])日本国内だけでなく、文字通りどこでも働けるため、他の職業と比べてもトップクラスに社会変化に強いといえます。
AIの急成長によるプログラマー絶滅の危機
2011年の話になりますが、アメリカのデューク大学のキャシー・デビットソン教授がNYタイムズ紙のインタビューで「2011年にアメリカの小学校に入学した子供の65%は、大学卒業時に今、存在していない職業に就く」と語って話題になりました。
それから13年経った今、当時の小学生は大学生になった年齢くらいですので、後数年で実現するとはちょっと考えにくいですが、AIというのは2011年には存在しなかった技術です。言葉自体はありましたが、現在のAI理論の基礎となるニューラルネットワークを利用したディープラーニングのモデルは2012年に初めて発表されています。その成長速度は年率数十%とすさまじいもので、AIインフラや生成AIなど既にAI産業自体もいくつかに分類されて考えられるようになっています。
プログラミング界隈も例外ではありません。最近では、AIがコードを書くということができるようになっています。例として、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)が提供するCode Whispererがあります。Code Whispererは、コメントや前のコーディングを参考に、次に書くコードを予想して候補を提供してくれる機能です。
実際にAWSのS3バケット(AWSが提供するストレージサービスの1つ)からファイルをダウンロードするコードをCode Whispererを利用して書いてみましょう。コメントを日本語で書く以外はEnterボタンを押し続けるだけで、以下のようにそのまま使えるコードが生成されます。
このようにAIがプログラミングができるようになったら、エンジニア、プログラマーはいらなくなるのでしょうか、、。結論、そうではありません。
なぜかというと、開発工程は要件定義、基本・詳細設計、開発、テスト、運用・保守と大きく5工程に分かれていますが、プログラミングはその一部業務で利用されているに過ぎず、お客様の納品までをサポートするにはチームをうまくマネジメントし、業務を横断的に俯瞰する必要があるからです。汎用AI(ドラえもんのように何でもできるAI)が開発されたならまだしも、今、主流のAI(ある作業に特化したAI)の開発方法だとエンジニア、プログラマーの仕事を全部代替する、というのは現実には少し難しいでしょう。そもそもAIを開発しているのも、データサイエンティストやAIエンジニアですしね。。。
まとめ
職業の将来性・安定性を4つの観点から見ると、エンジニアが作成するアプリ、システムには引き続き旺盛な需要があります。今後、人口減少に対応するため、DX化が益々企業にとって大きな課題になります。DX化の推進が追い風となって、今後も成長を続けるでしょう。また、社会変化に応じて様々な働き方ができ、AIによって代替することも難しいため、今後も人気の職業であり続けると考えられます。なりたい職業ランキングで常に上位に入るのも納得です。しかし、変化の早い業界であるため、プログラミングを覚えて安泰ということはなく、様々な知識を学び続けるが業界内で生き残る大事な戦略となります。